Surgical treatment of axillary osmidrosis is a popular form of aesthetic surgery in Japan.
Of the various surgical procedures for the treatment of axillary osmidrosis,
the usefulness of the excision of subcutaneous tissue via transverse incision has been established. Here,
we report our method of excision of subcutaneous tissue via small incision using
a double-pronged retractor with a thumb ring,
considering that the skin of the axillary fossa at the shoulder joint site is pliable.
With our method, the incised length could be shortened to an average 3.2 cm.

Key words:axillary osmidrosis, apocrine glands, surgical treatment, small incision

■はじめに
 腋臭症(ワキガ)は思春期頃よりアポクリン汗腺の発達とともに特有の悪臭を発する状態であり
その外科治療はポピュラーな美容外科手術の一つとなっている。腋臭症の手術法のうち剪除法は
その手術効果について一定の評価が得られている。しかし、4〜5cm以上の長い切開瘢痕や複数
の切開瘢痕が審美的な欠点になり、超音波吸引法やイナバ法などの切開創の短い手術が好まれる
ことも多い。さらに剪除法で切開創の長さをいかに短くできるかという検討も従来少なかった。
そこで今回、剪除法の切開創を短くする手術法(小切開剪除法と名付けた)について報告するとと
もに、その剪除範囲と切開創の長さについて検討を加えた。

■手術方法
 体位は仰臥位で、腋窩を十分に展開するように120度ぐらい上腕を外転、手首下に枕を置き、
肘関節を屈曲させた肢位にする。剪除範囲の目安として腋毛部より1cmほど外周にマークする。
腋窩を剃毛、消毒する。
 手術は局所麻酔下に行う。0.08%キシロカインE(1%キシロカインE20ml+メイロン5ml+
生理食塩水225ml)溶液を片側腋窩に100mlほど浸潤麻酔する。皺の方向に一致して腋窩中央に
短径より狭く小切開し、腋窩筋膜層で皮弁を剥離する。まず上腕側皮弁から剪除をはじめる。指
輪付き二爪鈎(
Fig.1、フェイスリフト用双鈎UR-5904、メディカルユーアンドエイ社製、大阪)
を切開創縁に掛け、届く範囲で通常の反転剪除を行う。剪除の深さは皮弁が全層植皮片となるほ
どで、汗腺層、毛包、脂肪組織を剪除する。引き続き、指輪付き二爪鈎を皮弁裏面に掛け、汗腺
層を切開創まで引っ張り出し剪除を行う(Fig.2a〜c)。指輪付き二爪鈎の把持する部位を少しず
つ変えて繰り返せば、皮弁が薄くなるとともに切開創の位置の可動域が広がり、マークした範囲
は十分に剪除可能となり、遠位端まで展開できる。次に方向を変え胸側皮弁に移り、同様に剪除
していく。胸側の近位端では、上腕をやや内転させ60度ぐらいの外転位に変換させると剪除が容
易になる(Fig.3a,b)。
 止血を確認し、創内を洗浄した後、皮弁と腋窩筋膜層に6-0黒ナイロン糸で2〜3箇所anchoring
sutureを行い、両皮膚切開端と腋窩筋膜層に同じ糸をかけ切開創を縫合し、細いペンローズドレ
ーンを創部より2本留置し、閉創する。ガーゼで圧迫し、絆創膏固定する。外来通院にて翌日にド
レーンを抜去、3日後に圧迫固定除去、7日後に抜糸する。


▼Fig.1A double-pronged retractor with a thumb ring.
■対象と方法
 対象は、1999年6月から2000年2月までの間にアネシス美容外科において小切開剪除法による
腋臭症治療を受けた17症例、34腋窩である。年齢は21〜52才(平均29.8才)。性別は女性15名、
男性2名である。
 方法は、剪除終了後に実際に剪除した手術範囲の長径、短径および切開創の長さをそれぞれ測定
した(
Fig.2)。


▼Fig.2 Diagram showing the range of excision and the incision length.
■結果
 剪除範囲の長径は最小6.0 cm、最大13.8cm、平均±標準偏差9.7±1.8cmであり、短径は最小
3.8 cm、最大10.0cm、平均±標準偏差5.6±1.4cmであった。切開長は最小2.1 cm、最大4.2cm、
平均±標準偏差3.2±0.5cmであった。切開長と長径との比は0.33、切開長と短径との比は0.57、
短径と長径との比は0.58であった。なお手術時間は一腋窩につき平均52分であった。

■考察
 腋臭症は多汗症を伴うことが多く、その程度には民族差がある。また白人が多汗症の治療を望む
のに対し、日本人を含めアジア人の多くは腋臭症の治療を望むともいわれ、治療目標により様々な
手術法が行われてきた。腋臭症、多汗症の手術法の分類として、Bisbal1)とWu2)は、@汗腺層の
切除法、A皮膚と汗腺層の一塊切除法、B@とAの併用法の3項目に分類した。また秦3)は@汗腺
層の切除法を、掻破法、掻破・吸引法、破砕法、剪除法の4項目に細分類し、交感神経切断術の項
目を新たに加え合計7項目に分類した。

 汗腺層の切除法のなかで剪除法の有用性については従来より一定の評価が得られているが、報告
者によりいくつかの切開線が提唱されている。文入4)、野平5)、藤井6)、岡田7)らは1本、Yoshi
kata8)は1〜2本、Harahap9) 、高戸10)、Wang11) 、Tung12)らは2本、Breach13)は3本、E
ndo14)は4本の横切開をそれぞれ報告している。またSkoogは1本の横切開と互いに合致しない2
本の縦切開を入れるとした15,16)。これら複数の切開をおく理由はマークした手術範囲を十分に剪
除するためである。しかし、このような複数の切開瘢痕や4〜5cm以上の長い切開瘢痕は審美的な欠
点となり、超音波吸引法やイナバ法などの切開創の短い手術が好まれることも多い。

 われわれは切開線を可及的に短くする剪除法を思案した。そこで指輪付き二爪鈎を使うアイデアを
思いつき、実践してきた。指輪付き二爪鈎は通常のスキンフックに比べ皮弁反転操作がしやすいとい
う利点を有する。本法の原理は、腋窩皮膚の伸展性が大きく、また関節部であることに基づく。すな
わち剪除により皮弁を次第に薄くすることで、切開創の位置を自由にかえられる。この腋窩皮膚の特
性を考慮に入れ、指輪付き二爪鈎を用いることにより、本検討結果で示されるように切開長を最小で
2.1 cm、平均で3.2cmにすることができた。切開を短くした剪除法ということで、本法を小切開剪
除法と名付けた。最近、岡本17)は本法と同じように横切開を極力小さくする工夫を報告した。モス
キートペアン鉗子で皮弁の内側から真皮を浅く把持して切開創まで引っ張り出して剪除を行うという
ものである。しかし、この方法では皮膚の挫滅の可能性があり、手術操作もやや煩雑であることが予
想される。この点、指輪付き二爪鈎はatraumaticな操作ができ、操作性もより良好である。
 
 超音波吸引法において、西内18)は腋窩中央に3cmの切開を入れ、伊藤19)は腋窩中央に2cmの切
開を入れると報告している。また阿部20)は2cmの切開を2本入れると報告している。これらの方法は
小切開剪除法に比べ、切開瘢痕は審美的に若干優れているものの、手術効果は劣ると考えられる。イ
ナバ法21, 22)では腋毛領域の遠位端に1.5cmの切開を入れるとされる。切開が腋毛領域外にある場
合、その瘢痕が目立つことも多い。またイナバ法では5日間のdouble tie-over固定を必要とし、その
間は日常生活の制限がある。これに対し、Tung12」は剪除法の利点として直視下の止血操作、ancho
ring sutureおよびペンローズドレーンの留置によりtie-over固定を必要とせず、術後早期から上腕の
運動制限が解除され日常生活の制限が少ないことを挙げている。小切開剪除法でも同様にtie-over固
定を必要とせず日常生活の制限が少ない。

 掻破法23) では1.5cmの切開を2本、掻破・吸引法24, 25) では7mmの切開を2本、クアドラカッ
トシェーバーによる内視鏡下手術26)では7mmの切開を2本、それぞれ入れると報告している。これら
の方法も小切開剪除法より切開長は短く審美的にやや優れているが、手術効果は劣ると考えられる。

 超音波吸引法、イナバ法、掻破法、掻破・吸引法、クアドラカットシェーバーによる内視鏡下手術
などの報告のように、これまで汗腺層を切除する器具の工夫が重視される傾向にあった。しかし、指
輪付き二爪鈎の利用という手術野を展開する器具の工夫も大切である。たとえると術者が右利きの場
合、切除する道具を持つ右手だけでなく、手術野を展開する左手の工夫も腋臭症の手術手技において
重要な要素であると考えられる。切開創より遠くの操作を遠くで行うのではなく、近くにもってきて
手術操作をするわけである。

 短径と長径との比0.58という本検討結果から、1本の短い横切開で楕円形にマークした予定手術範
囲を剪除するには短径側の剥離および剪除を十分に広く行うことが必要不可欠であることが確認された。
2本以上の複数の横切開では、短径側の剥離および剪除はマークした予定手術範囲程度で可能であるこ
とと対峙している。また切開長と長径との比が0.33であったことより、切開創の長さは剪除範囲の長
径の約1/3を必要とすることが示された。

 小切開剪除法の欠点は手術時間が一腋窩につき平均52分で、両側で2時間近くかかり、術者の労力
が大きいことである。しかし、術者の労力と引き換えに、審美的な満足度が増すことと、日常生活の
制限が少なくなることは患者にとって福音であると思われる。また剪除のためには、示指ないし中指
を切開創より創外に押し出す必要がある。一横指は約2cmであるため、2cm以下での切開で剪除を行
うことは不可能である。なお本検討症例外であるが、超音波吸引法などで再発した症例の二次手術や
高齢者では、腋窩皮膚の伸展性が乏しく切開長を短くすることは難しかった。


■おわりに
 指輪付き二爪鈎を用いた小切開剪除法の手術手技について報告するとともに、剪除範囲と切開創の
長さについて検討した。

本論文の要旨は第3回国際美容外科学会、第78回日本美容外科学会総会(2000年4月9日、東京)で発
表した。


             
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